開発環境をリセットしたり、クリーンインストールを行う際に、Visual Studio Code(VS Code)とSalesforce CLIを完全に削除する必要があることがあります。
通常のアンインストールでは、拡張機能の設定、ユーザー設定、キャッシュファイル、認証情報などが残存し、再インストール時に予期しない問題を引き起こす可能性があります。
この記事では、Windows 10でVS CodeとSalesforce CLIを完全に初期化する詳細な手順をご紹介します。
なぜ完全初期化が必要なのか
VS Codeの場合
- ユーザー設定とワークスペース設定の残存
- 拡張機能のキャッシュとデータ
- デバッグ設定とタスク設定
- Git認証情報とSSH設定
Salesforce CLIの場合
- 組織への認証情報(OAuth)
- プロジェクト設定とメタデータキャッシュ
- SSL証明書とセッション情報
- カスタム設定とエイリアス
これらを完全に削除することで、クリーンな環境での再スタートが可能になります。
Visual Studio Codeの完全アンインストール手順
ステップ1: アプリケーションの終了
重要: アンインストール前にVS Codeを完全に終了させます。
- VS Codeのすべてのウィンドウを閉じる
- Ctrl + Shift + Escでタスクマネージャーを開く
- 以下のプロセスが残っていれば終了:
Code.exe
Code Helper.exe
CodeHelper.exe
ステップ2: コントロールパネルからのアンインストール
- Windowsキー + R →
appwiz.cpl
と入力 - 「Microsoft Visual Studio Code」を見つける
- 右クリック → 「アンインストール」
- アンインストールウィザードに従って完了
ステップ3: ユーザーデータとキャッシュの削除
VS Codeは多くの設定やデータをユーザーフォルダに保存します。
削除対象フォルダ一覧(重要度順):
C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Roaming\Code
C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Local\Programs\Microsoft VS Code
C:\Users\[ユーザー名]\.vscode
C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Local\vscode-cpptools
C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Roaming\vscode-eslint
C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Roaming\vscode-prettier
削除手順:
- Windowsキー + R →
%APPDATA%
と入力してEnter - 「Code」フォルダを削除
- Windowsキー + R →
%LOCALAPPDATA%
と入力 - 「Programs」→「Microsoft VS Code」フォルダを削除
- ユーザーホームフォルダの「.vscode」フォルダを削除
ステップ4: 拡張機能データの完全削除
拡張機能は個別にデータを保存している場合があります。
主要な拡張機能データフォルダ:
C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Local\vscode-cpptools
C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Roaming\vscode-eslint
C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Roaming\vscode-prettier
C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Local\GitHubDesktop (GitHub関連拡張機能)
ステップ5: レジストリのクリーンアップ
⚠️ 注意: レジストリ編集は慎重に行ってください。
削除対象レジストリキー:
HKEY_CURRENT_USER\Software\Classes\Applications\Code.exe
HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorer\FileExts\.code-workspace
HKEY_CURRENT_USER\Software\Classes\vscode
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Classes\Applications\Code.exe
手順:
- Windowsキー + R →
regedit
- 上記のキーを検索して削除
- VS Code関連のコンテキストメニューエントリも削除
ステップ6: 環境変数の確認
稀にVS Code関連の環境変数が設定されている場合があります。
- Windowsキー + R →
sysdm.cpl
- 「詳細設定」→「環境変数」
- VS Code関連のパスがあれば削除
Salesforce CLIの完全アンインストール手順
ステップ1: 現在の認証状況を確認(オプション)
アンインストール前に、どの組織に認証されているかを確認:
sf org list
重要な組織がある場合は、認証情報をメモしておきましょう。
sf config list
ステップ2: 組織からのログアウト(推奨)
sf auth logout --all
これにより、すべての組織からログアウトします。
ステップ3: コントロールパネルからのアンインストール
- Windowsキー + R →
appwiz.cpl
- 以下のプログラムを見つけてアンインストール:
- 「Salesforce CLI」
- 「sf CLI」
- 「sfdx CLI」(古いバージョン)
ステップ4: 設定ファイルとキャッシュの削除
削除対象フォルダ一覧:
C:\Users\[ユーザー名]\.sfdx
C:\Users\[ユーザー名]\.sf
C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Local\sf
C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Local\sfdx
C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Roaming\sf
C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Roaming\sfdx
主要データフォルダの説明:
フォルダ | 内容 |
---|---|
.sfdx |
認証情報、組織エイリアス、設定 |
.sf |
新しいCLIの設定とキャッシュ |
AppData\Local\sf |
ローカルキャッシュとテンポラリファイル |
AppData\Roaming\sfdx |
ユーザー固有の設定 |
ステップ5: 環境変数のクリーンアップ
確認・削除対象:
SFDX_*
で始まる環境変数SF_*
で始まる環境変数PATH
からSalesforce CLI関連のパス
削除手順:
- Windowsキー + R →
sysdm.cpl
- 「詳細設定」→「環境変数」
- システム環境変数とユーザー環境変数の両方を確認
- Salesforce CLI関連の変数を削除
ステップ6: プロジェクトファイルの確認
開発プロジェクト内の以下のファイルも確認:
プロジェクトフォルダ\.sfdx\
プロジェクトフォルダ\.sf\
プロジェクトフォルダ\sfdx-project.json
プロジェクトフォルダ\.forceignore
これらは必要に応じてバックアップまたは削除してください。
完全初期化の確認方法
VS Codeの確認
コマンドプロンプトでの確認:
code --version
期待する結果: コマンドが認識されないエラー
ファイル関連付けの確認:
- 任意の
.json
ファイルを右クリック - 「プログラムから開く」にVS Codeが表示されないことを確認
Salesforce CLIの確認
新しいコマンドプロンプトで確認:
sf --version
sfdx --version
sf org list
期待する結果: すべてコマンドが認識されないエラー
PowerShellでの詳細確認
Get-Command code -ErrorAction SilentlyContinue
Get-Command sf -ErrorAction SilentlyContinue
Get-Command sfdx -ErrorAction SilentlyContinue
期待する結果: 何も返されない
トラブルシューティング
よくある問題と対処法
問題 | 原因 | 対処法 |
---|---|---|
VS Codeが完全に削除されない | プロセスが残存 | タスクマネージャーでプロセス強制終了 |
設定ファイルが削除できない | ファイルが使用中 | セーフモードで削除 |
コマンドがまだ認識される | 環境変数が残存 | システム再起動後に再確認 |
Salesforce認証が残る | キーチェーンに保存 | 資格情報マネージャーで削除 |
Windows資格情報マネージャーのクリーンアップ
Salesforce CLIは認証情報をWindows資格情報マネージャーに保存することがあります。
- Windowsキー + R →
control keymgr.dll
- 「Windows資格情報」タブ
- Salesforce関連の資格情報を削除
追加のクリーンアップ手順
システム全体のクリーンアップ
推奨ツール:
- CCleaner: レジストリとテンポラリファイルの削除
- Windows ディスククリーンアップ: 標準機能でのクリーンアップ
- Revo Uninstaller: より徹底的なアンインストール
開発フォルダの確認
プロジェクトフォルダ内の隠しファイルも確認:
.vscode/
.sfdx/
.sf/
node_modules/ (Node.jsプロジェクトの場合)
セキュリティ上の注意点
認証情報の処理
重要: 以下の情報が完全に削除されているか確認してください:
- OAuth トークン: Salesforce組織への認証
- SSH キー: Git連携用
- API キー: 各種サービス連携用
- パスワード: 保存されたパスワード
機密データの確認
開発中のプロジェクトに機密情報が含まれていないか確認:
- データベース接続文字列
- API エンドポイント
- 顧客データのサンプル
再インストール時のベストプラクティス
VS Code再インストール
推奨手順:
- 公式サイトから最新版をダウンロード
- System Installer(全ユーザー用)を選択
- 必要な拡張機能のみを段階的にインストール
- 設定は必要に応じて手動で再構成
Salesforce CLI再インストール
推奨手順:
- 公式ドキュメントで最新のインストール方法を確認
sf
CLI(新バージョン)の使用を推奨- 組織への再認証は必要な分のみ実行
- プロジェクト設定は最小限から開始
まとめ
この手順により、VS CodeとSalesforce CLIを完全に初期化できます。
最終チェックリスト:
VS Code
- ✅ アプリケーションのアンインストール
- ✅ ユーザーデータフォルダの削除
- ✅ 拡張機能データの削除
- ✅ レジストリエントリの削除
- ✅ 環境変数の確認
Salesforce CLI
- ✅ 組織からのログアウト
- ✅ CLIのアンインストール
- ✅ 設定ファイルとキャッシュの削除
- ✅ 環境変数のクリーンアップ
- ✅ 資格情報マネージャーの確認
全体
- ✅ コマンド認識の確認
- ✅ システムの再起動
- ✅ セキュリティチェック
重要なリマインダー:
- 作業前に重要なプロジェクトとコードをバックアップ
- 認証情報は安全に管理
- 段階的な再インストールを推奨
完全な初期化により、開発環境の問題を根本的に解決し、クリーンな状態からの開発が可能になります。
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