要件定義(1)では、要件定義フェーズ最初に行う、組織・業務体系の把握と整理について説明してきました。
第二回の内容としては、業務フローの作成についての説明がメインとなります。
業務フロー図の作成
要件定義で検討する対象の組織と業務が特定出来たら、それぞれ各部門担当者へのヒアリングを実施して、業務詳細を確認します。
それらの情報が集まったら業務フロー図を作成していきましょう。
まずは現状の業務フロー図(As-Isモデル)を作成して、それをもとに新業務フロー図(To-Beモデル)を定義するのが一般的な流れとなります。
ただし、システム導入がメインのプロジェクトでは、業務要件定義自体をやらなかったり、すでに定義されたTo-Beの業務フローに基づき、システム要件定義から開始する場合もあると思います。
そのため、プロジェクトに合わせて、どのような業務フローを作成するのか確認しておきましょう。
To-Beモデルの業務フローを提供していただき、それに基づき新業務フローを作成するのか。または、新業務フローをベースとして、システム化業務フローを作成するのか。
現行業務(As-Is)、新業務(To-Be)フロー図の作成
業務フロー図を作成するにあたっては、前工程で作成した業務機能階層図(業務機能一覧)に基づき作成していきます。
※図はクリックすると拡大表示されます。
業務フローの大中小をいきなりまとめて、フローを書き始めるのではなくて、最初に業務全体の流れを把握して、それをブレークダウンして分析していきます。
具体的には、業務機能階層図の業務分類(大中小)を以下のステップで詳細化していきます。
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1レイヤー1定義
業務フローを検討するときには大分類の流れを定義して、業務全体の大きな流れをまず把握します。(下図の業務プロセスのレイヤー1に相当)
例では、販売管理→購買管理→生産管理→在庫管理→財務管理のような分類を定義しています。
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2レイヤー2定義
大分類の中の1業務ごとに、業務内容をブレークダウンして、中分類の業務フローを整理します。(業務プロセスのレイヤー2)
例では、レイヤー1の販売管理について、ブレークダウンして、引き合いから請求までの流れを整理しています。
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3レイヤー3定義
最後にレイヤー2(中分類)レベルの業務を作業レベルまで落とし込みをしています。
見積管理業務プロセスを例に記載していますが、顧客の登録作業から見積の作成、承認申請、そして見積書の送付までを簡単なフローで表現しています。
【業務プロセスのレイヤー定義】
このように最初に大枠での業務全体を定義して、そこから詳細化していことで、抜けもれの防止にもつながります。
業務フロー図とシステム化業務フロー図
業務フロー図というのは、あくまで業務に関する作業の流れを記載してフロー図を指します。そのため、システム処理に関しては、ほとんど記述しません。
例えば、さきほどのフローの例では、見積書の作成や承認申請の作業を記載していますが、システム化フロー図(システム処理フロー図)の場合には、具体的なシステムの振る舞いまで詳細に記載します。
例:見積書作成画面(SFDC画面)を表示→見積データを入力して保存(SFDC画面)→上長へ承認申請を行う(SFDC承認ボタン)→承認依頼のメール通知(SFDCワークフロー)→上長が内容を確認し承認・却下(SFDC画面)→見積書出力(PDF)(SFDC画面)
業務フロー図では見積書の作成と承認申請と表現される内容について、システム化業務フロー図(システム処理フロー図)では、このような処理プロセスをフロー図として表現していくことになります。
また処理プロセスフローだけではなく、データフローの→も追加して、データベースへの読み書きなども表現します。
ただし、小規模なプロジェクトやシステムでは、作業負荷の低減や効率化により業務フロー図を作成せず、直接システム処理フロー図を作成するような場合もありますので、状況に合わせて方針を検討してください。
業務フロー一覧
業務フロー一覧のシートには、作成する業務フロー図のシートを一覧化して定義しておきましょう。
1つの業務フロー図で業務をどのように区切るのかによって、一覧に記載する粒度も異なってきます。
上記の例では、販売管理を、引き合いから受注管理までとそれ以降で業務フロー図を分けて定義しています。
業務フロー図の目次のような位置づけとなるため、シートの内容が網羅できるように記載しておけばよいでしょう。
凡例
業務フロー図で利用するフロー図の凡例をまとめています。フロー図については、一般的な定義はありますが、可読性などを意識して、わかりやすければ、あまり意識しなくてもよいでしょう。
上記のサンプルも本サイトが提供するテンプレートに入っていますが、ご自由にカスタマイズしてご利用ください。
業務フロー図(システム処理フロー図)
最後に、業務フロー図の作成となりますが、エクセルで業務フローを作成する際は、縦長に作成することをお勧めします。
業務が複雑で細かい場合には、1業務フローでかなりのボリュームになることがあります。横スクロールの場合、処理を確認するのが大変なので、縦スクロールで確認できるようにするとよいでしょう。
レーン(縦線の列)には、業務分類、業務内容を時系列で定義します。また、それぞれの業務で作業を行うアクター(人やシステム)を定義します。
あとは、業務機能階層図の作業手順に沿って、開始から終了までの作業を業務フロー図として表現していきます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。業務フロー図の作成手順については、ご理解いただけましたでしょうか。
本記事でご紹介いたしました業務フロー図のテンプレートは以下からダウンロードしてご利用いただけます。
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次回は、業務要件のとりまとめと、システム化(システム要件定義)に関して説明していきます。