今回のテーマは、Salesforceの要件定義の最初に実施しておくべきことです。
初めてSalesforce(セールスフォース)をご利用になられるお客様に対してシステムの導入を行う場合、導入後に運用を担当するシステム部門の方には、事前にSalesforceのアドミニストレータトレーニングを受講していただくことが望ましいです。
そうすることでSalesforceではどのような標準機能があり、どのような要件は標準設定で対応できるのかなど勘所をつかんでいただくことができるため、要件定義が効率的に進められます。
予算や時間の都合によっては、受講していただくことが難しい場合も多いため、そのような場合には、要件定義の中で少し時間をとって、Salesforceの基本を説明しておくとよいでしょう。
どのような内容を説明すればよいのかについては、本記事にて説明していきたいと思います。
お客様へSalesforceの基本を説明
「Salesforceとは何か、どのような機能があって、どこまでカスタマイズできるのか。」
営業の方でなくとも、Salesforceの導入プロジェクトに携わっているとこのような質問を受けることが多いと思います。
説明する機会も多いため、必要最低限の資料は事前に用意しておき、毎回少しカスタマイズしながら利用するとよいでしょう。
説明用の資料は、本サイトにたくさん用意しているので、ぜひご活用ください。
また、単純に資料だけの説明ではなく、実際にSalesforceの組織(Sandbox環境やDeveloper環境)を使って、画面操作をしながら説明するのがよいでしょう。
提案活動の際に利用したデモ用のSalesforce組織があればそれを利用するのもよいでしょう。
ただし、限られた貴重な時間の中で実施するので、要点を絞って必要最低限の内容を説明するようにしましょう。
事前に説明したほうがよい内容としては、以下の事項となります。 ※このあたりは状況に合わせてカスタマイズしてください。
- UI(画面イメージ)や操作感
- Salesforceの基本用語(オブジェクト、項目、タブなど)
- Salesforceのアーキテクチャー(一般的なクラウドサービスとの違い)
- Salesforceの標準機能(画面での登録・編集・削除など、レポート・ダッシュボード)
- 標準設定(カスタマイズ)でできること、できないこと
- セキュリティ・データアクセス権限の考え方(ロール、プロファイル、共有設定など)
上記のうち、「1.画面イメージや操作感」、「4.標準機能」については、実際にSalesforce組織にログインし、画面操作の説明をすればよいでしょう。
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※簡単なシナリオに基づいて、デモを実施するとよりイメージがつくと思います。シナリオを作成する場合には、お客様の業務に沿ったシナリオやデータを使うとより身近に感じてもらえるでしょう。
また、Salesforceの機能に関しての説明をする場合には、セールスフォース独自の用語には気を付けましょう。
特に権限関連(ロールやプロファイル)、またオブジェクトなどについては、事前に概念や言葉の意味を説明しておきましょう。
基本用語を説明しないと、ロールってなんですか?オブジェクトって何ですか?のような質問が多くなり、本来伝えるべき内容がスムーズに頭に入ってこない状態となってしまいます。
成果物として用語集を作成することも多いため、いつでも使えるようにあらかじめ作成しておくとよいでしょう。
本サイトで提供している用語集テンプレートは以下の記事からダウンロードしてご利用ください。
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参考セールスフォース用語集(Excelテンプレート)サンプル
本記事では、Salesforceプロジェクトですぐに使えるSalesforce基礎用語の用語集のテンプレートをご提供しております。 1.Salesforceの用語集サンプル プロジェクト開始後、お客様 ...
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「2.アーキテクチャー」については、基本的にPPTのスライドなどを用いて、以下のキーワードを説明するのがよいでしょう。
クラウドサービスごとの提供レイヤー
このPPTでは、IaaS、PaaS、SaaSのサービスごとに提供されるレイヤーの違いがよくわかります。
SalesforceはSaaSのため、インフラの部分はすべてカバーされていますし、データベース、ミドルウェア、フレームワークなども含まれます。
さらにその上位レイヤーも含まれており、標準で提供される機能については即日利用開始することも可能となっています。
標準機能では対応できず、アドオン開発を行う場合にも、必要なものはすべてそろっているため、クラウド上で開発を行い、そのままテストからリリースまで一貫して実行できるようになっています。
外部インタフェース連携についても、外部システムからSalesforceのデータを扱う場合には、Salesforceが標準で提供しているAPIを利用していただけば、Salesforce側の開発は全く行わなくても対応していただけます。
マルチテナントクラウド
上記のような資料を用いて、クラウドの基本、サービスの種類、アーキテクチャー、マルチテナントサービス、インスタンスとリージョンなSalesforceの基本を説明するとよいでしょう。
特にリソースは自動管理されており、閾値を超過した場合にオートスケールするような仕組みや、個別にリソースの調整はできないなどの制約事項も合わせて伝えておくとよいでしょう。
もし技術者の方が要件定義に同席している場合には、Salesforce特有のガバナ制限についても説明をしておくとよいでしょう。
※Salesforceのベースの仕組みは頻繁に変わることはないと思いますが、常に進化し続けるシステムのため、変更点はよく理解しておき、アップデートは常にチェックするようにしましょう。
「5.のSalesforce標準機能」については、標準機能でできること/できないこと、また開発すればできることのイメージをつかんでいただくことにより、お客様との要件定義が効率的に進められます。
最後に「6.セキュリティ・データアクセス権限の考え方」については、ロールやプロファイル、共有設定や共有ルールなどについての考え方を以下のような資料を用いて説明しておきましょう。
上記はロール階層のイメージ図ですが、お客様の会社の組織構成をそのままSaleforceのロールとして定義する必要があるというわけではなく、
基本的にはシステムのデータアクセス権限や承認プロセスなどシステム機能をベースに考えるべきことを理解していただきましょう。
最初の段階では、データのアクセス権限の考え方を説明しておくとよいでしょう。
このようにSalesforceの基本を最初に理解していただくことが重要となるため、要件定義開始前もしくは、直後に時間をとって説明をしておきましょう。
本サイトでは、Salesforceの基本知識に関する記事を用意しているので、それらの記事をベースに説明してもよいかもしれません。
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参考セールスフォースの基礎Ⅰ(1)クラウドの基礎~アーキテクチャ
今回からCreative Content Lab Tokyo(クリエイティブコンテンツラボトウキョウ)が主催しているセールスフォースのトレーニングコースとほぼ同様の講義内容を記事として公開していきます ...
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資料のダウンロード
本記事にて説明した内容のスライドは、以下からダウンロードしてご利用いただくことができます。
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参考ユーザ向け説明用資料(クラウドの基礎)スライド
本記事では、Creative Content Lab Tokyo(クリエイティブコンテンツラボトウキョウ)が作成したユーザ説明用の資料(クラウドの基礎)のスライドをご提供しております。 1.ページサ ...
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まとめ
要件定義の最初にやるべきことについて、まずはSalesforce(セールスフォース)とは何かを知っていただくための説明内容について解説しました。
お客様がすでにSalesforceのトレーニングを受講して理解しているという場合には改めて説明する必要はないかもしれませんが、
要件定義の中で、ロールの設定やセキュリティの検討などをする際には、どちらにしてもこのような資料が必要になってくるため、
都度用意するのではなく、必要な時にすぐに説明できるように事前に準備しておきましょう。