前回に引き続き、テスト方針書(後編)の内容について説明していきます。
本サイトでは、テスト方針書やテスト計画書のPPT(パワーポイント)テンプレートやサンプルも用意しているので合わせてご利用ください。
前半の内容を確認したい場合はこちらの記事を参照ください。
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テスト方針書の作成(後編)
4.テスト方針
2.テスト担当者方針
テスト設計担当者やテスト実施担当者を選定する場合には、テスト品質向上の観点から適切な要員をアサインすることが望ましいです。
一般的には以下の観点で要員のアサインを行います。
参考
- テスト設計者については、プログラムの仕様に関する設計を行ったものとは別の者が担当する。
- 本システムに関する業務仕様・システム仕様を理解しているもの、かつソフトウェア開発のテスト技法を理解しているものがテスト実施を担当する。
- テスト実施に必要となる仕様の理解や、テスト技法に関する知識が乏しい場合、テスト準備期間に必要なトレーニングを実施する。
ただし、実際のプロジェクトでは、限られた要員の中でやりくりするしかないことも多いと思います。特に小規模のプロジェクトでは、設計担当者が実装やテストまですべて担当することもあると思います。
その場合には、少なくとも仕様の理解やテスト技法など理解不足の状態でのテストとならないように、必要なトレーニングや教育は実施するように心がけましょう。
3.テストツールの利用
テストで利用するツールについての方針を記述します。
例えば、Webシステムの負荷テストでよく利用されるJmeterや、APIのテストで利用するPostmanのようなものなどについて、利用するツール名やテスト工程、利用用途などをリストアップして記述しておきます。
また、ツール以外にも、第三者機関にセキュリティ診断を依頼するなど、外部サービスを利用する場合にもその内容を記述しておきましょう。
4.テスト設計方針
続いて、テスト設計の方針を記述します。
例:テスト設計では、テスト観点表を作成し、それに基づきテスト設計を行うなど。
参考
- テスト観点表:テスト観点とは、作成したシステムが正しく動作するかを確認するための切り口(軸)を指す。機能/非機能テストを行う場合に、どの部分をどのようにテストするのかという観点を表に整理したもの。
- テスト設計書:テスト対象の機能一覧を整理し、各機能に対して、テスト観点を掛け合わせて、テスト対象項目を抽出する。※業務フローの各プロセスや条件分岐などの粒度で作成する。
- テストケース表:テストの実行単位を1ケースとする。主要項目:前提条件、実行手順、入力値、期待値、テスト結果(OK/NG)など。テスト観点表、テスト設計仕様書、各種テスト技法を組み合わせてテストケースを作成する。
テスト優先度の設計に関する観点も記述します。
参考
テスト実施の優先度については、以下の観点に基づき優先度を決定する。
- 業務観点でリスクの高い業務機能を優先する
- 業務の実行手順を考慮した優先度を設定する。(例:月初処理⇒月中処理⇒月末処理)
- リソース制約(特定日しか操作できないなど)がある場合は制約を優先する。
5.テスト実施
テスト実施方針については、以下の例では、機能テストと非機能テストに分けて記述しています。
機能テストでは、例えば単体テストの実施方法として、Salesforceの標準機能に関するテスト方法、Apexなど開発したプログラムに関するテスト方法など分類しています。
参考
単体テストの実施方法
- ワークフローや承認プロセスなどの標準機能のテストについては、テストケース表に基づき、UI上から操作を行い、仕様通りの動作をしているか検証する。
- Apexトリガー/バッチ処理については、テストケース表に基づき、テストクラスを作成し自動テストを実行する。
上記のように各テスト工程で、機能領域ごとにどのようにテストを実施するのか明記しておきましょう。
続いて、非機能テストに関する実施方法ですが、性能テストやセキュリティテストについて具体的な実施方法や測定方法などを記述します。
参考
(1)単体性能テスト
- 各機能の単体性能としての性能を測定する。
- オンライン(画面)に関する処理性能テストは、対象端末のブラウザからのイベント(ボタンクリックなど)を起点として、WebブラウザからのRequest⇒サーバ内部処理⇒WebブラウザでResponse受信⇒描画までのターンアラウンドタイムで計測する。(※1)
- Salesforceサーバのリソースに関しては、制御負荷のため測定対象外とする。
- 単体性能テストは、処理結合テストにて実施する。
- 性能目標値は結合テスト計画段階にて検討し定めることとする。
特にブラウザを使って画面系の性能を測定する場合は、レスポンスタイムとターンアラウンドタイムの違いを意識して、どこの範囲についての性能を検証するのか図示するなど、明確に定義しておきましょう。
負荷性能テストに関しては、実施する場合には、Salesforceのサポートへお問合せし、実施内容や時間帯などを調整する必要があるので注意してください。
“テスト日の少なくとも 2 週間前までにパフォーマンステストの承認申請を行う必要があります。この 2 週間前までの通知のない要求は拒否される場合があります。要求を送信するには、ヘルプポータルに移動して、[Network and Performance (ネットワークとパフォーマンス)] > [Notify Salesforce of an upcoming activity (活動の予定を Salesforce に通知)] > [Schedule a Performance Test (パフォーマンステストをスケジュール)] を選択します。
30 日の期間を超える要求は承認されません。この場合は、複数の要求が必要です。“引用元「パフォーマンステストに関する FAQ」より
https://help.salesforce.com/
実施体制
テスト実施体制については、体制図や体制表を用いて、全体を俯瞰できるものと、管理ルートや役割が明確にわかるように定義しましょう。
テスト工程ごとの作業内容や成果物についての役割表も合わせて作成しておきましょう。
特に、テスト計画書や仕様書についは、だれが作成し、だれがレビュー・承認を行うのか決めておく必要があります。
5.管理方針
第5章では、テスト工程における管理業務の方針を記述します。
1.進捗管理方針
最初にテストの進捗管理方針を記述します。
例では、テスト進捗管理表を用いて管理する方針としています。定量的に進捗を管理するため、以下の方法で進捗率(%)を算出しています。
消化率=(基準日時点の消化ケース数)/(総ケース数)
テスト進捗管理表のサマリーシートを添付して、全体のケース数、消化済数の表やグラフを表示し、進捗状況が一目でわかるようにしています。
本サイトで用意しているテスト進捗管理表を利用したい場合は、以下よりダウンロードいただけます。
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2.品質管理方針
続いて、品質管理方針について記述します。
品質管理方針では、品質要素と品質水準を定義します。以下の例では、品質要素として、テスト密度とバグ密度の2つを定義しています。
それぞれ以下の計算式で算出します。
テスト密度の計算式: テスト密度 = テストケース数/規模
バグ密度(欠陥密度)の計算式: バグ密度 = 検出バグ数/規模
※母数の規模に関しては、FP(ファンクションポイント)などの機能数を用いることが一般的ですが、プロジェクトの方針に合わせて定義してください。
また、各指標値については、過去の類似プロジェクトを参考にするなど、何を基準として設定するかを決めておきましょう。
3.バグ(故障)管理方針
続いては、各テスト工程で検出したバグの管理についての方針を記述します。
参考
1)各テスト工程で検出したバグは、故障管理表に記録し管理する。
また、1回目のテスト完了時に、バグの傾向分析を行い、同様のバグがほかの箇所に潜在していないか確認し、存在する場合は横展開を行う。
さらに、バグの検出密度についても指標値と比較し密度が足りていない場合には、追加テストを実施するなど、適切な対応を検討する。
故障管理表について、本サイトで用意しているテンプレートを利用したい場合は、こちらよりダウンロード‘いただけます。
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4.回帰テスト実施方針
回帰テストについては、どのタイミングで実施するのか。どの範囲までテストするのかについて方針を決めておきます。
参考
テスト範囲の決定について
- 回帰テストの実施範囲に関しては、テスト対象機能の修正や変更内容により、影響範囲を調査の上、テスト責任者が必要なテストケースを決定する。
- 回帰テストの実施タイミングについては、バグ修正後や仕様変更後、また環境やパラメータの変更後に実施する。また、回帰テストによりデグレードが発生した場合には、すべてのテストケースが正常となるまで繰り返し回帰テストを実施する。
5.課題管理方針
最後に、課題の管理方針について記述します。
テスト工程で発生した課題について、どのように管理・運用するのか記述すればよいでしょう。
まとめ
テスト方針に関する説明(後編)は、ここまでとなります。
テスト方針書(PPT版)のテンプレートが必要な方は、以下の記事からダウンロードしていただくことができます。
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